大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

千葉地方裁判所 平成3年(わ)1153号 判決

本店所在地

千葉市若葉区桜木町五四〇番地の一五

株式会社地商総業

(右代表者代表取締役 渡邉元)

本籍

千葉市若葉区桜木町五一九番地

住居

同市同区桜木町五四〇番地の一五

会社役員

渡邉元

昭和一四年一月一日生

被告人株式会社地商総業に対する法人税法違反、建築基準法違反、都市計画法違反、被告人渡邉元に対する法人税法違反、所得税法違反、建築基準法違反、都市計画法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官綿崎三千男出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社地商総業を罰金六〇〇〇万円に、被告人渡邉元を懲役三年及び罰金一四〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人渡邉元においてその罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人渡邉元に対し、この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社地商総業(平成二年六月一七日に株式会社地商土木から商号変更)は、千葉市桜木町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区桜木町)五四〇番地の一五に本店を置き、作業員宿舎、事務所及び倉庫等の賃貸業を営むものであり、被告人渡邉元は、被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、

第一  被告人渡邉は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、不動産賃貸収入の一部を除外し、簿外預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  昭和六一年四月一日から昭和六二年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得額が一億四五一〇万六六三八円であったのにかかわらず、同年五月三〇日、千葉市新宿二丁目(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市中央区新宿二丁目)六番一号所在の所轄千葉東税務署において、同税務署長に対し、その所得額が八〇四万三〇六五円でこれに対する法人税額が二四〇万九二〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額六一七五万七五〇〇円と右申告税額との差額五九三四万八三〇〇円を免れ、

二  昭和六二年四月一日から昭和六三年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得額が一億七二五六万三八三三円であったのにかかわらず、同年五月二五日、右千葉東税務署において、同税務署長に対し、その所得額が八五二万八二〇八円でこれに対する法人税額が二四四万一二〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額七一三三万五九〇〇円と右申告税額の差額六八八九万四七〇〇円を免れ、

三  昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度における被告人会社の実際所得額が二億五〇七一万〇五七四円であったのにかかわらず、同年五月二九日、千葉市祐光一丁目(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市中央区祐光一丁目)一番一号所在の千葉東税務署において、同税務署長に対し、その所得額が一八五九万九五三五円でこれに対する法人税額が六八五万一五〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一億〇四三三万八二〇〇円と右申告税額との差額九七四八万六七〇〇円を免れ、

第二  被告人渡邉は、パチンコ景品交換業及び不動産賃貸業等を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、パチンコ景品交換業の経費を水増しし、不動産賃貸収入の一部を除外し、簿外預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿した上、

一  昭和六一年分の実際総所得額が三二三七万七七五七円であったのにかかわらず、昭和六二年三月一六日、千葉市新宿二丁目(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市中央区新宿二丁目)六番一号所在の所轄千葉東税務署において、同税務署長に対し、昭和六一年分の総所得額が一七〇三万四〇六二円でこれに対する所得税額が三〇六万二九〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一一三五万七八〇〇円と右申告税額との差額八二九万四九〇〇円を免れ、

二  昭和六二年分の実際総所得額が三八七二万五九一一円で、分離課税による短期譲渡所得額が一五一八万九四八七円であったのにかかわらず、昭和六三年三月五日、右千葉東税務署において、同税務署長に対し、昭和六二年分の総所得額が一三一二万九三九一円でこれに対する所得税額が一二六万一二〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二三二一万四七〇〇円と右申告税額との差額二一九五万三五〇〇円を免れ、

三  昭和六三年分の実際総所得額が五三一八万一九六〇円であったのにかかわらず、平成元年三月二日、右千葉東税務署において、同税務署長に対し、昭和六三年分の総所得額が一八四三万〇二九五円でこれに対する所得税額が三三六万二五〇〇円である旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二〇三〇万四六〇〇円と右申告税額との差額一六九四万二一〇〇円を免れ、

第三  被告人渡邉は、被告人会社の業務に関し、

一  平成元年一年ころ、鹿北産業株式会社に対し、別紙一覧表Ⅰ記載のとおり、千葉市若松町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区若松町)九八三番一に軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺二階建作業員宿舎(一部事務所兼用で、有限会社京葉興地が賃借して使用)二棟の建築工事を注文し、鹿北産業株式会社をして、同年二月下旬ころから三月中旬ころの間に、順次本件各建築工事に着手せしめたものであるところ、法定の除外事由がないのに、本件各建築工事の着手前に、あらかじめ本件各建築工事の建築計画が、当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることについて、千葉市長に対し確認の申請書を提出して同市建築主事の確認を受けず、

二  法定の除外事由がなく、かつ、千葉県知事より権限の委任を受けた千葉市長の許可を受けないで、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内である千葉市若松町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区若松町)九八三番一において、賃貸用作業員宿舎等の用に供する目的で、前記一のとおり、平成元年二月下旬ころから三月中旬ころの間、前記鹿北産業株式会社をして、本件各建築工事に着手せしめ、同社をして、そのころ順次右建築物を完成させ、もって、法律で認められた建築物以外の建築物を新築し、

三  平成二年四月ころから七月ころの間、鹿北産業株式会社に対し、別紙一覧表Ⅱ記載のとおり、千葉市若松町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区若松町)九八二番の七に軽量鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺二階建作業員宿舎(一部事務所等兼用)七棟の建築工事を順次注文し、同社をして、同年四月下旬ころから七月下旬ころの間に、順次本件各建築工事に着手せしめたものであるところ、法定の除外事由がないのに、本件各建築工事の着手前に、あらかじめ本件各建築工事の建築計画が、当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることについて、千葉市長に対し確認の申請書を提出して同市建築主事の確認を受けず、

四  法定の除外事由がなく、かつ、千葉県知事より権限の委任を受けた千葉市長の許可を受けないで、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内である千葉市若松町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区若松町)九八二番の七において、賃貸用作業員宿舎等の用に供する目的で、前記三のとおり、平成二年四月下旬ころから七月下旬ころの間、前記鹿北産業株式会社をして、本件各建築工事に着手せしめ、同社をして、そのころ順次右各建築物を完成させ、もって、法律で認められた建築物以外の建築物を新築し、

五  平成二年一一月ころ、有限会社榎本興業所に対し、千葉市若松町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区若葉町)九八三番一に鉄骨造スレート葺平家建車庫(床面積約一五二・七五平方メートルで、有限会社聖大栄工業が賃借して使用)一棟の建築工事を注文し、前記榎本興業所をして、同年一二月上旬ころ、本件建築工事に着手せしめたものであるところ、法定の除外事由がないのに、本件建築工事の着手前に、あらかじめ本件建築工事の建築計画が、当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合するものであることについて、千葉市長に対し確認の申請書を提出して同市建築主事の確認を受けず、

六  法定の除外事由がなく、かつ、千葉県知事より権限の委任を受けた千葉市長の許可を受けないで、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内である千葉市若松町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区若松町)九八三番一において、車庫の用に供する目的で、前記五のとおり、平成二年一二月上旬ころ、前記榎本興業所をして、本件建築工事に着手せしめ、同社をして、そのころ右建築物を完成させ、もって、法律で認められた建築物以外の建築物を新築し、

七  平成三年五月二三日ころ、千葉県知事より権限の委任を受けた千葉市長から、別紙一覧表Ⅲ記載のとおり、昭和六二年一一月上旬ころから平成二年七月下旬ころまでの間に、法定の除外事由がなく、かつ、千葉市長の許可を受けないで、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域である千葉市若松町(平成四年四月一日から政令指定都市移行に伴い千葉市若葉区若松町)九八三番一外一筆の土地において、賃貸用作業員宿舎等の用に供する目的で順次建築させた合計一一棟の各建築物を平成三年一一月三〇日までに除去するよう同年五月二二日付けで命令を受けたにもかかわらず、右命令に従わず、もって、千葉県知事より権限の委任を受けた千葉市長の命令に違反した

ものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人渡邉元の当公判廷における供述

一  被告人渡邉元の検察官(平成三年一〇月一二日付け・二一枚綴りのもの及び平成四年二月五日付け)及び司法警察員(平成三年一〇月二八日付け、同年一一月一日付け、平成四年一月二〇日付け、同月二二日付け(三通)、同月二四日付け、同月二七日付け、同月二八日付け及び同月二九日付け)に対する各供述調書

一  商業登記簿謄本(乙13)

判示第一及び第二の事実について

一  被告人渡邉元の検察官(平成三年一〇月一五日付け)及び司法警察員(同月一二日付け・五二枚綴りのもの)に対する各供述調書

一  吉田悦子(平成三年一〇月六日付け)、玉澤宏(平成三年九月二四日付け・一六枚綴りのもの)、鈴木庸夫、東利夫、大森茂樹及び渡邉彌代榮の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の代表者勘定調査書

一  検察官作成の電話聴取書

判示第一の事実について

一  被告人渡邉元の検察官に対する平成三年一〇月一三日付け及び同月一四日付け(二通)各供述調書

一  吉田悦子(平成三年九月二八日付け、同年一〇月七日付け、同月九日付け・二通り及び同月一〇日付け・二通)、渡邉實、西田省司、湯川克芳及び井桁年明の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の平成二年一二月一一日付け脱税額計算書説明資料、作業収入調査書、賄費収入調査書、賃金調査書、給与手当調査書、退職金調査書、交際費調査書、減価償却費調査書、保険料調査書、修繕費調査書、水道光熱費調査書、消耗品費調査書、租税公課調査書、運賃調査書、家賃地代調査書、リース料調査書、支払手数料調査書、雑費調査書、雑損失調査書、受取利息調査書、受取家賃調査書、物品取扱手数料調査書、雑収入調査書、支払利息割引料調査書、固定資産売却益調査書、固定資産売却損調査書、固定資産除却損調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費限度超過額調査書、事業税認定損調査書

一  押収してある法人税確定申告書三綴(平成三年押第二五九号の134)及び法人税修正申告書一綴(同号の2)

判示第二の事実について

一  被告人渡邉元の検察官に対する平成三年一〇月一四日・一五日付け供述調書

一  吉田悦子(平成三年一〇月一一日付け)及び玉澤宏(平成三年九月二四日付け・一一枚綴りのもの)の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の平成二年一二月一二日付け脱税額計算書説明資料、事業収入調査書、給料賃金調査書、減価償却費調査書(二通)、水道光熱費調査書、旅費交通費調査書、通信費調査書、広告宣伝費調査書、接待交際費調査書、修繕費調査書(二通)、消耗品費調査書、福利厚生費調査書、車両費調査書、事務費調査書、租税公課調査書、雑費調査書、不動産収入調査書、租税公課調査書、損害保険料調査書、借入金利子調査書、地代家賃調査書、給料賃金調査書、その他の経費調査書、青色申告控除調査書、利子収入調査書、債務保証料収入調査書、貸付金利息収入調査書、リース収入調査書、リース経費調査書、申告所得調査書、分離短期譲渡収入調査書、分離短期譲渡原価調査書

一  押収してある所得税の確定申告書六通(平成三年押第二五九号の5ないし10)

判示第三の事実について

一  被告人渡邉元の検察官(平成三年一一月七日付け)及び司法警察員(同月二日付け及び同月六日付け)に対する各供述調書

一  藤井正、川嶋一信、深山英治、吉田悦子、足立純一、鈴木健悟(平成三年四月二〇日付け)、青山正(二通)、瀧晴彦、中條正之(二通)、仲田幸治、榎本健治(二通)、田中匡、竹内伸、玉澤宏(三通)、村松幹雄、駒崎節弥(二通)、横山敏男(二通)、斎藤勝(二通)、足立守、谷中栄美の司法警察員に対する各供述調書

一  千葉市長作成の告発状

一  千葉市建設局建築部建築指導課長作成の「(株)地商総業に関する建築基準法第6条関係の資料を別添のとおり報告します。」との表題の書面

一  千葉市長作成の「都市計画法に基づく区域指定等について(報告)」と題する書面

一  司法警察員作成の開発行為の許可権限の委任根拠報告書二通

一  司法警察員作成の平成三年四月二三日付け仮設建築物に対する捜査報告書

一  司法警察員作成の平成三年四月一九日付け違反現場の土地売買契約書写し入手報告書

一  司法警察員作成の平成三年四月二〇日付け工事業者名簿作成報告書、建築物等工事費支払状況捜査報告書及び建築工事費分析結果報告書

一  司法警察員作成の平成三年三月二六日付け都市計画法違反並びに建築基準法違反被疑事件捜査報告書

一  司法警察員作成の平成三年五月一七日付け聴聞議事録入手報告書

一  司法警察員作成の平成三年一〇月二三日付け及び平成四年一月二九日付け各都市計画法違反ならびに建築基準法違反被疑事件捜査報告書

一  司法警察員作成の平成四年一月二二日付け敷地面積判明捜査報告書及び建築物面積判明捜査報告書

一  司法警察員作成の平成三年四月一〇日付け、平成四年一月二二日付け及び平成四年一月八日付け各検証調書

一  司法警察員作成の平成三年三月一八日付け都市計画法違反並び建築基準法違反被疑事件現場写真撮影報告書

一  司法警察員作成の平成三年三月一九日付け都市計画法違反並び建築基準法違反被疑事件現場確認捜査報告書

一  司法警察員作成の平成三年三月一九日付け航空写真による現場状況報告書

一  司法警察員作成の平成三年四月二二日付け現場付近開発前の写真入手報告書

一  司法警察員作成の平成三年四月二四日付け建築物建築前の現場付近写真の写し入手報告書

一  千葉東警察署長作成の千葉市若松町九八二番地七の土地等が市街化調整区域等に該当するか等についての捜査関係事項照会書(謄本)及び千葉市長作成の右照会に対する回答書

一  司法警察員作成の市街化調整区域指定年月日に関する電話照会捜査報告書

一  千葉東警察署長作成の千葉市若松町九八二番地七の土地等が開発行為の許可を要する区域であるかどうか等及び右土地等について被告人らに対する開発行為の許可の有無等に関する各捜査関係事項照会書(謄本)並びに千葉市長作成の右各照会に対する回答書

一  千葉東警察署長作成の千葉市若松町九八二番地七の土地が市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域であるかどうか等についての捜査関係事項照会書(謄本)及び千葉市長作成の右照会に対する回答書

一  千葉東警察署長作成の千葉市若松町九八二番地七の土地等に建築された建築物の建築確認申請の有無等についての捜査関係事項照会書(謄本)及び千葉市長作成の右照会に対する回答書

一  司法警察員作成の違反建築物についての電話照会捜査報告書

一  千葉東警察署長作成の千葉市若松町九八二番地七の場所の作業員宿舎七棟の建築が建築基準法六条一項の何号に該当するかについての捜査関係事項照会書(謄本)及び千葉市長作成の右照会に対する回答書

一  登記官作成の千葉市若松町九八二番地七の土地についての不動産登記簿謄本

判示第三の一、二、五、六、七の事実について

一  被告人渡邉の検察官に対する平成三年一〇月一二日付け供述調書(五二枚綴りのもの)

(法令の適用)

被告人渡邉及び被告人会社の判示第一の各所為は、各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告人会社については、更に同法一六四条一項)に該当するが、被告人両名につき情状により同法一五九条二項を適用し、被告人渡邉については所定の懲役と罰金とを併科することとし、被告人渡邉の判示第二の各所為は、各事業年度ごとに所得税法二三八条一項に該当するが、情状により同法二三八条二項を適用し、所定の懲役と罰金とを併科することとし、判示第三の一、三、五の各所為は、各建築工事ごとに建築基準法九九条一項二号、六条一項一号(一、三については更に三号)(被告人会社については更に同法一〇一条)に該当し、判示第三の二、四の各所為は、各建築工事ごとに平成二年法律第六一号(都市計画法及び建築基準法の一部を改正する法律)附則三項により同法による改正前の都市計画法九二条七号、四三条一項(被告人会社については更に同法九四条)に該当し、判示第三の六の所為は、都市計画法九二条七号、四三条一項(被告人会社については更に同法九四条)に該当し、判示第三の七の所為は、都市計画法九一条、八一条一項、四三条一項(被告人会社については更に同法九四条)に該当するところ、判示第三の七の罪につき、被告人渡邉について懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人渡邉につき、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により刑及び犯情の最も重い判示第一の三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条一項によりこれを右懲役刑と併科することとし、同条二項により判示第一、第二、第三の一ないし六の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人渡邉を懲役三年及び罰金一四〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予し、被告人会社につき、同法四八条二項により判示第一の一ないし三、第三の一ないし七の各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金六〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

被告人渡邉は、働いて得た収入を税金などに持っていかれたくなかったことや、老後の生活のことを考え、判示の法人税法違反、所得税法違反の行為に及んだものであるが、その手段は種々に及ぶ巧妙なものであるし、法人税については、逋脱額合計二億二五〇〇万円余、率にして約九五パーセント、所得税については、逋脱額合計四七〇〇万円余、率にして約八六パーセントに及んでいて、いずれも高額かつ高率なものである。このような行為が、国民の納税意欲や申告納税制度に与える影響には少なくないものがある。

また、違法建築に関する行為については、多数の違法建築物を建築しただけでも悪質といわざるを得ないのに、多数回にわたる行政機関からの是正勧告を無視し、これを建築していたものであり、千葉市長からの除去命令に対しても、わずか二棟を除去したのみである。

これらの事情を考えると、被告人会社及び被告人渡邉の刑事責任には重いものがあるといわなければならないが、当然のことではあるものの、法人税、所得税ともに、その本税分の支払をし、所得税については重加算税等の支払をし、法人税についての重加算税等についても誠実にその支払にあたる考えであること、違法建築物の除去についても、これを他に賃貸していて直ちにすべてを除去することはできない状態にあるものの、代替地をさがすなど違法状態を解消する努力をしていること、被告人渡邉は、国税局の査察調査に際し、一時は裏資金に基づく定期預金証書の所在について虚偽の供述をしたことはあるものの、その後これらを提出し、その取調べにも素直に応じている様子であることなど反省していると認められること、罰金刑に処せられたことがあるほかには前科もないこと等被告人らに有利な事情もあるので、これらを総合勘案し、被告人両名を主文のとおりの刑に処することとした次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉田徹)

(別紙)

一覧表Ⅰ

〈省略〉

一覧表Ⅱ

〈省略〉

一覧表Ⅲ

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例